訳し方のヒント:「~に準ずる」

こんにちは。メディカル翻訳者&メディカルライターの山名文乃です。

「~に準じる」を英語に翻訳したいとき、皆さまはどのように工夫していますか。

今回は、当局向けの申請文書でよく見かける表現から、幾つか例示したいと思います。

 

(1)XXの用法・用量(案)はYY注射剤に準ずるものとした。

→The dosage and administration of XX was set based on that of YY injection.

 

(2)欧州での開発経緯を基にAA社はYY経口製剤に準じる用法・用量での適応取得を計画した。

→Based on the background of EU development, AA planned to obtain an approval of XX with the same indication, dose and administration as that of YY oral formulation.

 

(3)採血は表1に示すスキームに準じた投与後時間に行う。

→Blood samples will be taken at post-dosing time points according to the scheme described in Table 1.

 

(4)治験責任医師等の氏名,所属,治験における役割及び資格(履歴書又はそれに準じるもの)の一覧表を付録16.1.4に添付すること。

→There should be provided in appendix 16.1.4, a list of the investigators with their affiliations, their role in the study, and their qualifications (curriculum vitae or equivalent).

※ (4)は ICH ガイドライン(ICH-E3)からの引用です。カンマのみ補っています。

 

もう少し掘り下げてみましょう。

製薬協が公開しているトレーニング資料を見ると、ここにも「~に準じて」という表現が使われています。

重篤な有害事象 SAE とは
有害事象のうち、以下のいずれか1つ以上に該当する事象です。
・死亡・死亡のおそれ
・入院又は入院期間の延長・障害・障害のおそれ
・上記に準じて重篤
・先天異常

http://www.jpma.or.jp/medicine/shinyaku/tiken/allotment/pdf/medical_training_29.pdf

 

同ページに「<参考資料>統一書式(書式12-1)「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」施行規則273条」とありますので、厚生労働省のホームページから「書式12-1:重篤な有害事象に関する報告書(医薬品治験)」を確認します。

すると「重篤な有害事象に関する情報―重篤と判断した理由」の欄に

□死亡
□死亡のおそれ
□入院又は入院期間の延長
□障害
□先天異常
□上記に準じて重篤

とあるのが分かります。ここにも「~に準じて」と書かれています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/touitsu2.html

 

ではFDAの定義を見てみましょう。

FDAでは、SAE について、このように定義しています。

Death
Life-threatening
Hospitalization (initial or prolonged)
Disability or Permanent Damage
Congenital Anomaly/Birth Defect
Required Intervention to Prevent Permanent Impairment or Damage (Devices)
Other Serious (Important Medical Events)

https://www.fda.gov/safety/reporting-serious-problems-fda/what-serious-adverse-event

 

日本ではどのように定義されているのでしょうか。

ICH-E2Aの「治験中に得られる安全性情報の取り扱いについて」を見てみましょう。

a. 死に至るもの
b. 生命を脅かすもの
c. 治療のため入院または入院期間の延長が必要となるもの
d. 永続的または顕著な障害・機能不全に陥るもの
e. 先天異常を来すもの

https://www.pmda.go.jp/files/000156127.pdf

「~に準じて」は消えてしまいました。

 

さらに、E2D「承認後の安全性情報の取扱い:緊急報告のための用語の定義と報告の基準」も確認してみましょう。

(1) 死に至るもの
(2) 生命を脅かすもの
(3) 治療のための入院又は入院期間の延長が必要であるもの
(4) 永続的又は顕著な障害・機能不全に陥るもの
(5) 先天異常・先天性欠損を来すもの
(6) その他の医学的に重要な状態と判断される事象又は反応

https://www.pmda.go.jp/files/000156940.pdf

やはり「~に準じて」とは書かれていません。

 

もう一度FDAに戻り、今度は、FDA Adverse Event Reporting Systemでの記載内容を確認したいと思います。

Did any of the following happen? (Check all that apply)
Hospitalization – admitted or stayed longer
Required help to prevent permanent harm
Disability or health problem
Birth defect
Life-threatening
Death (Date of Death) (mm/dd/yyyy)
Other serious/important medical incident (please describe)

https://www.accessdata.fda.gov/scripts/medwatch/index.cfm?action=consumer.reporting

 

いかがでしょうか。

以上、ご参考まで。